中国茶の種類

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中国茶の種類について – 6大分類

中国茶、と聞くと、みなさんはどんなお茶を思いつきますか?
烏龍茶、ジャスミン茶、プーアール茶・・・
中国には、数え切れないくらい多くの名前のお茶があり、品種もいろいろありますが、実は、元は同じ「茶の木」からできてます。それは、カメリア-シネンシス(Camellia Sinensis)というの名前のつばき科の常緑樹です。
シネンシスの語源はラテン語で、「中国の」という意味です。カメリアは椿(つばき)のことなのですが、元々は、17世紀の宣教師で植物学者であったゲオルク・ヨーゼフ・カメルの名に由来しています。茶の木が学術的にカメリア-シネンシスの一種と結論されたのは、1905年の国際植物学会、わずか100年ほど前のことです。カメリア-シネンシスは、世界で380種類ほどあり、そのうち260種類の木は、中国にあると言われています。

カメリア・シネンシス

お茶の木の原産地は、中国の西南部(現在の雲南省あたり)で、お茶を飲むルーツもこの地域とされています。
ただ、なぜ、どのように人がお茶を飲むようになったのかは、学術的には決定的な結論に至っていません。
薬用として飲み始めたという説が有力ですが、神話の世界の記述しかないので、史実からの検証は難しいものと考えられています。
雲南、四川、貴州のあたりには、野生のお茶の木が現存していて、一番古いもので2700年の樹齢、人が植えた樹では、800年ほどの茶木もあります。

すべてのお茶は、植物としては同じカメリア-シネンシスなのですが、製法、作り方が違うと、まったく別の味や香りになります。
その「お茶の作り方によって分類する」のが、今からご紹介する「中国茶の種類」です。

中国茶の水色

主に、どのくらい発酵(正しくは酸化酵素の活性による酸化発酵)させるかで、6種類に分類します。これを「6大分類」と言い、緑茶(lücha)、白茶(baicha)、黄茶(huangcha)、青茶(qingcha/烏龍茶/ウーロン茶)、紅茶(hongcha)、黒茶(heicha)に分類されます。緑茶は不発酵、白茶は微発酵、黄茶は弱後発酵、青茶は半発酵、黒茶は後発酵です。
日本でよく知られている烏龍茶(ウーロン茶)は、分類上は「青茶」と呼ばれますが、中国でも「乌龙茶/烏龍茶(wulongcha)」という呼び方も使われます。ただ、烏龍茶は種類が多いので、一般的には、安渓鉄観音や武夷岩茶、鳳凰単叢などと、産地+銘柄名で呼ばれることのほうが多いです。
また、「黒茶」の分類にあたる代表的な茶葉に、普洱茶(プーアール茶)があります。黒茶をそのまま英語にすると Black tea なのですが、英語の Black tea は、実際には「紅茶」のことです。ただ、英語圏の中国茶専門店でも、お店によっては、中国語からの直訳に準じてなのか、黒茶を Black teaと書いて、紅茶を Red tea と表記したりするところもあり、けっこう混乱します。

中国茶は基本的に発酵度で分類しますが、茶葉の見た目が緑っぽくても、緑茶ではなく烏龍茶だったり、見た目が緑色なのに、白茶だったりします。茶葉の色よりも、どちらかと言うと、お茶の水色(すいしょく)に注目したほうが6大分類を理解しやすいかもしれません。
上の画像は、発酵度の順にそれぞれのお茶の水色を並べたものです。緑茶や白茶はちょっと微妙なところもありますが、烏龍茶など発酵度が高くなると、どんどん水色も濃くなっていくのが分かります。一番濃いのはプーアール茶ですが、これは後述するように、熟茶のプーアール茶です。生茶のプーアール茶では、緑茶や白茶と同じくらい透明な水色になります。

中国茶イメージ

6大分類以外の中国茶

また、上記の6大分類以外に、花茶などの再加工茶を入れて7大分類とすることもあります。
あるいは、さらに茶外茶(茶の葉以外を原料とした健康茶類)を加えて、合計8種類に分類する見方もあります。

再加工茶としての工芸茶

「再加工茶」という分類は、主にジャスミン茶や花の咲く工芸茶のことをいいます。ベースの緑茶や白茶に、ジャスミンで香り付けをおこなったり、花を結んで、形を作ったりなど、お茶になったあとに、さらに人の手や花が加わっているものを「再加工茶」としています。ジャスミン茶や工芸茶は、一般的には「花茶」の総称でくくられることもありますが、分類上は「再加工茶」という種類になります。
さらに、八宝茶花茶(薔薇茶や菊茶のハーブ)、苦丁茶や杜仲茶は、原材料にお茶の葉(カメリア-シネンシス)を使っていないので「茶の外」(茶外茶)に分類されます。カフェインの少ないお茶を探したい場合は、茶葉なしの八宝茶や花茶(ハーブ)がおすすめです。
また、茶外茶においても、以下で説明するような、漢方的な「温性」「涼性」の区分を意識することが大切です。例えば、薔薇(玫瑰メイクイ)は温性で体を内側から温めますが、菊花は涼性で体を内側から冷やす素材になり、苦丁茶はかなり強い涼性です。

茶葉の発酵度と「温性」「涼性」の性質の関係

中国茶は茶葉の発酵度で6大分類に分けられますが、発酵の度合いが高いお茶ほど、体を温める効果があります。
漢方や中医学では、食品を「熱性」「温性」「平性」「涼性」「寒性」と分類して考えますが、これは中国茶についても当てはまります。紅茶や黒茶、武夷岩茶などの発酵の進んだ茶葉は「温性」、緑茶や白茶、またジャスミン茶などの発酵度の低い茶葉は「涼性」となります。半発酵の烏龍茶は、それらの中間の「平性」とされています。
一般的に、涼性の茶葉は春夏の暑いシーズンに飲むのがおすすめで、温性の茶葉は冬の寒い時期に飲むのが人の体に適しています。春は花茶、夏の暑い日は緑茶、涼しくなってくる秋には烏龍茶を、そして寒い冬には紅茶、というように、季節とともにメインで飲む日常の茶葉を変えてみるのもいいかもしれません。
例えば、ジャスミン茶の好きな方でも、ジャスミン茶のベース茶葉は白茶や緑茶などの涼性の茶葉が多いので、もし冷え性などでお困りの場合には、冬場にたくさんのジャスミン茶を飲むのは控えるようにしてください。熱湯で入れて温度が温かくても、涼性の茶葉のお茶は、体を内側から冷やしてしまいます。冷え性の改善には、紅茶や岩茶などの発酵度の高い温性の茶葉が適しています。

緑茶(不発酵) 涼性
白茶(微発酵) 涼性
黄茶(後弱発酵) 涼性
烏龍茶(半発酵) 平性
紅茶(完全発酵) 温性
黒茶(後発酵) 温性

緑茶(不発酵のお茶)

緑茶は中国大陸で一番飲まれているお茶です。特に龍井茶の消費量は多く、後述の鉄観音と双璧をなす人気銘柄です。
緑茶は不発酵の茶葉で、「涼性」ですので、からだの熱を鎮める(鎮火)といわれています。夏の暑い時期や、お酒を飲みすぎたとき、吹き出物が多いとき等に飲むのがとてもいいです。また、カフェインが多めなので目覚まし効果もあります。
緑茶にはいろいろな味がありますが、それは作り方が様々だからです。中国の緑茶の作り方は、摘み取り→殺青(高熱で発酵[酸化]を止める)→整形→乾燥という過程になります。摘み取り後にすぐに熱を入れて茶葉の発酵を止めてしまいます。殺青・乾燥の方法は、以下の表のように大きく分けて4種類あります。

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緑茶の種類 特徴 中国茶の例 茶葉画像
A 炒青緑茶
(釜炒り)
平べったい形、珠の形など。
香ばしい香りと味わいです。
西湖龍井が有名です。
西湖龍井茶
碧螺春
蒙頂甘露
珠茶 など
龍井茶
B 烘青緑茶
(熱風・熱)
ふわっと開いたような形の茶葉。
さわやかな香りと味わいです。
花茶のベース茶葉もこの作り方です。
黄山毛峰
太平猴魁
安吉白茶 など
黄山毛峰
C 晒青緑茶
(日干し)
茶葉をそのまま乾燥させた形のお茶です。
茶葉本来の味が楽しめます。
雲南毛峰
普洱茶(生茶)原料
など
雲南毛峰緑茶
D 蒸青緑茶
(蒸す)
中国では少ないのですが、
恩施玉露などがあります。
また、中国で日本向けに生産している
日本茶の煎茶や玉露もこれにあたります。
恩施玉露
日本茶全般 など

中国茶は、A炒青、B烘青、C晒青が主流ですが、日本茶はほとんど、D蒸青の蒸して作る方法です。ただ、近年は中国でも日本輸出向けの茶葉(ペットボトルの原材料等)として、蒸青製法により多くの緑茶が量産されています。

中国の高級緑茶は、日本の緑茶と比べると生々しく、自然のままのより荒々しいフレッシュな香りのものが多いです。この中国緑茶の新茶の味わいには格別なものがあり、一度はまると、毎年の春の訪れにかかせない香りになります。新茶=春の訪れとしてプレミアム感があるのは、日本も中国も同じです。

白茶(微発酵のお茶)

白茶は、福建省北部の福鼎市や福安市で生産される微発酵茶です。
飲み口がよく、とてもやさしくて甘い味がします。また、長い時間お湯に浸出していても苦くなりません。摘み取った後、少しだけ発酵させて、熱を加えて発酵[酸化]を止めます。白毫銀針や、白牡丹、寿眉などが有名です。
白毫(バイハオ)は芽の表面の白い産毛のことで、福建語で「パーホウ」といいます。「ピコー」pekoe という言葉は紅茶の茶葉のこととして知られていますが、この「ピコー」の語源は、福建語「パーホウ」とされています。この白毫がたくさんある茶葉ほど、良いロットとされています。

工芸茶
銀針で作られた工芸茶

2000年代には白毫のふさふさした工芸茶(お花の咲くお茶)も生産されていました。しかし、2010年代後半以降、老白茶(陳茶)が人気になると、良質な白茶の多くが固形茶の生産に回されるようになりました。白茶を固形茶にするアイデアは、雲南の普洱茶(餅茶)の製法の模倣と言われています。これにより、以前は廉価だったクラスの茶葉が老白茶として高く取引されるようになりました。
この白茶の復興を見ると、いわゆる「高級茶」が、時代の流行に左右される、とても相対的なものであることが分かります。

黄茶(弱後発酵)

生産量がとても少ない、貴重なお茶です。見た目が少し黄色っぽいのが特徴です。
緑茶に似た製法なのですが、悶黄(もんおう)という独特の工程があります。これは、発酵を止めた茶葉を紙で包むか湿った布で覆い、一定時間おいて酸化を促進する工程です。一般的には、殺青→揉捻→悶黄→乾燥 という流れになります。
緑茶に比べると、まろやかでコクがあります。コップに浮き沈みする茶葉もとてもきれいです。
君山銀針、霍山黄芽、蒙頂黄芽などが有名です。

烏龍茶/青茶(半発酵)

烏龍茶というと「福建省産」というのは日本でもよく知られていますが、実際に福建省で一番たくさん飲まれているのが烏龍茶です。中国全土で一番飲まれているお茶は緑茶なのですが、地域によって差があり、福建や広東などの華南では烏龍茶が最もよく飲まれています。特に、鉄観音の消費量が圧倒的です。
烏龍茶は銘柄により発酵度も様々で、製法も年数を重ねて研究された銘茶が多く、いろいろな味や香りが味わえる、とても楽しいお茶です。

見た目が深い青緑色をしているので「青茶」とも呼ばれます。大体30%~70%くらい部分的に発酵させます。摘み取り後に水分を抜き、茶葉を揺らして発酵を促します。岩茶などの発酵度の高い茶葉は「温性」に区分されます。
烏龍茶は産地ごとに特徴があり、大きく4つに分けられます。

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烏龍茶の種類 特徴 中国茶の例 茶葉画像
A 閩北烏龍
(福建省北部)
武夷岩茶が有名です。
見た目はちょっとカールした、長ぼそい形です。
こげ茶色でしっかり焙煎しているものが多いのが特徴。
良い岩茶は「岩韻」が味わえます。
水仙
水金亀
鉄羅漢
大紅袍
白鶏冠
肉桂など
武夷岩茶鉄羅漢
B 閩南烏龍
(福建省南部)
安渓鉄観音が有名です。
茶葉の形は荒い粒状で緑色(清香)-褐色(焙煎)。
良い鉄観音は「音韻」が味わえます。
鉄観音
黄金桂 本山
毛蟹 水仙など
安渓鉄観音
C 広東烏龍
(広東省)
鳳凰単叢が有名です。
茶葉は褐色で細長い形。
見た目では想像できないような、華やかで甘い香りがします。
味は苦めで、且つすっきりしています。
鳳凰単叢蜜蘭香
大烏葉 宋種
玉蘭香 蜜蘭香
鴨屎香 など
鳳凰単叢
D 台湾烏龍茶
(台湾)
凍頂や阿里山は丸まった粒状の清香系烏龍茶です。
文山包種と東方美人は細長い茶葉です。
台湾茶には大陸産とは違う繊細な旨味があります。
文山包種
凍頂烏龍茶
東方美人
阿里山烏龍茶
人参烏龍 など
凍頂烏龍茶

福建省武夷山の岩茶は中国大陸でも銘茶として有名です。武夷岩茶は、茶葉の収穫地により、正岩茶・半岩茶・洲茶とランクが分けられています。また、製茶工場を「研究所」と呼び、それぞれ名茶師が岩茶の品質と伝統を管理しています。しかし、市場では大紅袍(ダーホンパオ)の名前が独り歩きする傾向にあり、ブレンドの茶葉を焙煎して「大紅袍」の名称で販売していることも多くあります。正直、なにをもってして「本物」の武夷岩茶とするかは生産者によって意見がまちまちで、絶対的な基準はないというのが実情です。
安渓鉄観音は、浙江省杭州の龍井茶と人気を二分する定番茶です。台湾の製茶法を取り入れた、焙煎の軽い清香系が大陸のすみずみまで流通し、スタンダードとなりました。そのため、「清香」と「濃香」という言葉の使用にも変化が見られます。元々「濃香」というのは、伝統的な焙煎の深い製法の鉄観音のことでしたが、近年は清香系の茶葉の中で味・香りの強いもの(甘味が濃いもの)を「濃香」という呼び方で販売しています。品質はピンキリですが、内安渓(祥華、感徳など)の著名な産地のロットは、毎年高値で取引されています。
安渓鉄観音の「清香」の成功にあやかってか、ここ数年、広東省潮州の鳳凰単叢でも新製法の「清香」タイプのものが人気となり、鴨屎香などの銘柄名で販売されています。鳳凰単叢の従来の香りは個性が強く鮮烈で、人を選びましたが、鴨屎香は苦味を抑え甘みと爽やかさを強調することで、より広範な層への浸透に努めています。廉価なロットは奶茶(タピオカミルクティー)のベース茶葉としても使われ、名前のインパクトが強いので、チェーン店で人気になっています。

福建省武夷山、岩茶産地
武夷山風景区内の茶園にて

紅茶(完全発酵)

茶葉を完全に発酵させたのが紅茶です。
紅茶というとアッサムやセイロンなど、インドやスリランカの紅茶が思い浮かびますが、インドで紅茶が生産されるようになったのは19世紀以降、イギリス帝国の東インド会社によるプランテーションがきっかけです。それ以前には、イギリスは中国から紅茶を輸入していました。紅茶も中国が発祥の地で、特に武夷(「Bohea ボヘア/ボヒー」と呼ばれていました)の正山小種(ラプサンスーチョン)は紅茶のルーツといわれる歴史のある銘茶です。
紅茶の由来としては、元々、船積みされた烏龍茶が自然に発酵が進んで紅茶の味わいになり、それが好まれるようになったという説もあります。
日本に紅茶が初めて輸入されたのは明治時代ですが、夏目漱石の『明暗』では、主人公の飲む紅茶のことを「ウーロン茶」と表記している箇所もあります。当時は紅茶と烏龍茶の用語の区分が明確ではなかったのかもしれません。

大航海時代より数世紀、アジアは物質的に世界で最も豊かな地域であり、そのアジアの商品に憧れるヨーロッパという構図がありました。明・清は繁栄の頂点であり、この時代に中国(当時はまだ「中国」の名称ではありませんが)のお茶もヨーロッパで消費されるようになりました。
イギリス(大英帝国)では紅茶は初め貴族階級の飲み物でしたが、コーヒー・ハウスで人気になると、次第に中産階級、労働者階級の間にも普及し、中国(清)からの紅茶の輸入量は膨大なものになりました。(ちなみに、紅茶にたっぷり砂糖を入れるので、中南米等からの砂糖の輸入も増えました。)この中国-イギリスの貿易不均衡により、イギリスは茶の代金の決済手段である銀の流出に悩まされるようになりました。そこで、茶の購入の代償として、イギリス領インドで生産したアヘンを中国に売るようになりました。これが後々のアヘン戦争、清の敗戦へとつながります。なので、近代から20世紀にいたる中国の停滞は、もとをたどればお茶が売れすぎたのが原因とも言えないわけではありません。

1806年ごろの広州港とヨーロッパの商館
18世紀末頃の広州港(ボストン美術館蔵)

また、アメリカ独立戦争の端緒となった1773年のボストン茶会事件(Boston Tea Party)も、紅茶の貿易と関税をめぐる宗主国イギリス・東インド会社と植民地アメリカの対立が背景にあり、茶という商品が世界史を動かす潜在的な原動力になっていたことが分かります。この時、ボストン湾に投げ捨てられた大量の茶葉は、黄山屯渓の緑茶(Hysonハイソン)、ボヘア(武夷山)の工夫紅茶(Congouカングー)や小種紅茶(Souchongスーチョン)等でした。

中国紅茶の中では、世界三大紅茶のうちのひとつ、安徽省のキームン紅茶(祁門keemun)が有名です。また、2010年前後から中国国内で爆発的な紅茶ブームとなり、それまでの伝統的な製法と違う、まろやかな味が強調された正山小種(ラプサンスーチョン)や金駿眉など武夷紅茶の生産も盛んになってきています。その他、雲南の工夫紅茶(滇紅茶)や広東の英徳紅茶も人気で、体を温める効果のある紅茶は、特に冬に多く飲まれるようになっています。

中国では、紅茶の種類(等級)を以下のように分けます。

坦洋工夫
福建福安市の坦洋工夫紅茶

1. 小種紅茶(スーチョン)… 福建省の武夷山市星村鎮桐木村で作られる正山小種のこと。欧州輸出向けはスモーキーな紅茶ですが、中国国内では近年のニーズに合わせたまろやかな風味のものが多く流通しています。
2. 工夫紅茶(カングー/コンフー)…「工夫」は「手間暇かけて丁寧にする」の意味。19世紀に「工夫茶」といえば、坦洋工夫などの福建紅茶のことでした。祁門(キームン)紅茶、川紅(四川紅茶)、滇紅(雲南紅茶)も有名です。金毫(=ゴールデンチップ)の豊富なロットほど高価となり、様々なグレードがあります。
3. 紅砕茶 … 安価な茶葉を細かく粉砕加工した紅茶のことで、フレーバーティーの原材料や奶茶チェーン店などで使われます。
4. 輸出向け砕茶 … 主に海外大手メーカーのティーバッグ等の原材料となります。

黒茶(後発酵茶)

黒茶は酸化発酵を止めた後に微生物発酵をさせた後発酵茶です。
四川省雅安の藏茶、広西省の六堡茶や湖南省の茯茶などがあり、中でも、雲南省の普洱茶(プーアール茶/Puercha)が有名です。
プーアールという名前は、雲南省の地名の普洱市からきています。昔、近隣の山々から普洱に茶葉が集まり、そこで加工されていました。
雲南省南端の西双版納(シーサンパンナ)地域には、樹齢数百年の茶木が多く、お茶マニアの聖地になっています。

普洱茶は後発酵茶と呼ばれていますが、それは緑茶の製法で仕上げたお茶に、再度水分を加えて発酵させるからです。このように人工的に発酵させる方法(渥堆 wodui)で作ったお茶を熟茶(shuchaスーチャ)と呼び、普洱茶では1973年から始まった製法です。人工的に水分を加えて作る熟茶は、製造後すぐに飲むことができます。ダイエットで知られているプーアール茶はほとんどが熟茶で、黴臭いというイメージもありますが、すべての熟茶が黴臭いわけではなく、しっかり丁寧につくられたものはこってりとした風味で普通に美味しいです。

普洱茶プーアール茶

茶馬古道

昔は緑茶を円盤状(餅)やレンガ状(磚)に固め、遥か遠くの都市へと馬やラクダの背に乗せて運んでいました。そして、お茶が雨に濡れたりするうちに、自然に発酵が進んで、数か月後に町に到着するころには変色していたのです。このように自然に発酵が進んだ普洱茶を、生茶(shengchaシェンチャ)と呼びます。
生茶は飲みごろになるまで、何年もの時間が必要です。南の茶木はタンニンが多く、製茶後当初はかなり渋いので、おいしく飲めるようになるまで少なくとも5年はかかるといわれています。年数がたつと価格も高くなってしまうので、1-2年目の生茶を予め購入し、自分で保管して数年後に少しずつ飲むのがおすすめです。茶の愛好家でも、最終的には生茶だけを愛飲する人も多いです。
唐宋の時代から、お茶は「茶馬古道」を通じてチベットに運ばれていました。チベットから中国へは、馬やロバ、羊皮、麝香、またインドの宝石などが供給されていました。

「南のシルクロード」とも言われるこの茶馬古道にはいくつものルートがあり、西域、ウイグル、モンゴル、そしてロシアへも茶が普及したと言われています。固形茶は隊商間で通貨としても利用されていました。茶馬古道は20世紀中頃まで使われており、現在ではその遺跡が観光地として人気になっています。

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普洱茶:生茶(Shengcha) 普洱茶:熟茶(Shucha)
普洱茶/プーアール茶・ 生茶 普洱茶/プーアール茶・熟茶
  • お茶を摘み取ってから日干しにして乾燥させます。
  • 何年も寝かせて飲みごろになるまで待ちます。
  • 茶葉は緑色から茶褐色へと変化していきます。
  • 茶がらは葉っぱがやわらかく、緑色を帯びています。
  • お湯の色は透明感があり、生産後数年は強い渋みが感じられます。
  • 10年以上経過すると渋みが消えていき、すっきりとした深みのある味に変化していきます。
  • お茶を摘み取り、日干しにして乾燥させます。
  • そのお茶を積み上げて、水分を加え湿度と温度の高い状態で数日から数週間かけて発酵させます。(渥堆)
  • 茶葉は出来上がった状態で全体が茶褐色になっています。
  • 茶がらは、葉っぱが固く、茶色-黒っぽい色をしています。
  • お湯の色はワインレッドのような深みがあります。
  • 味には独特の深みがあり、まろやかでこってりした印象があります。

以上が、緑茶・白茶・黄茶・青茶(烏龍茶)・紅茶・黒茶(普洱茶)の中国茶の種類の6大分類です。
6大分類以外に区分される以下の2種類は、「お茶を使って細工・加工したもの」=「再加工茶」、「お茶の木から採れた茶葉以外の物を使って茶として飲むもの」=「茶の外」とに分けられます。

再加工茶

お茶を作ったのち、香りをつけたり、成型したりするお茶を再加工茶と呼びます。一般には、茶葉のままでは売れにくいので、加工を施して商品化したものと言われていますが、良いものもあります。緑茶や白茶にジャスミン花を使って香りをつけるジャスミン茶、花を編み込んで作る工芸茶も再加工茶に分類されます。型に詰めて成型する「餅茶」や「沱茶(プーアール茶 雲南小沱)」なども、分類上は再加工茶の種類に含めることもできます。

沱茶
沱茶(雲南小沱

茶外茶(茶の外)

「茶の木からとれた葉」以外のものでお茶として飲用するものを「茶の外」(茶外茶)といいます。健康茶として知られるものも多くがこの分類になります。
八宝茶、苦丁茶(一葉茶)、杜仲茶、また薔薇花茶菊花茶などの花を乾燥させてできたハーブティーとしての花茶があります。最近では、乾燥させたフルーツを花茶や茶葉などとブレンドした「花果茶」というハーブティーも中国/台湾の若い女性の間で人気になっています。
薔薇花茶(玫瑰)や菊花茶、漢方の素材でもある花草茶も人気で、体調を整えるレシピとして日常的に飲まれています。

それぞれの中国茶の飲み方・入れ方については、中国茶の入れ方をご参照ください。